中国で働くことに興味がある日本人看護師さんに向けて、
日系クリニックでの仕事について詳しくお話します。
海外で働く看護師というと、ネット上では英語圏の情報が中心。
中国(アジア圏)に関する情報は不足していますよね。
この記事は、
上記をもとにまとめましたので、かなりリアルな内容になっています。
中国(とくに日系クリニック)での働き方を理解し、自分が働く姿をイメージしやすくなるはずなので、ぜひ参考にしてください。
※日本で中国語スキルを活かせる仕事は別記事にまとめました↓
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【中国語ができる看護師】ニーズが高い医療現場はこんなところ
【日本人看護師in中国】どうやって仕事を見つける?
私が働いていたのは中国にある日系クリニック。
この仕事は転職サイトで見つけました。
看護師向け転職サイトに海外案件はほとんどなく、中国・東南アジアに強い転職サイトに看護師の募集案件が出ています(たまに)。
日系クリニック等の看護師募集はとにかく希少。
興味のある方は、転職サイトに登録しておくか、こまめに求人検索をかけてみましょう。
求人案件に応募したあとの流れですが、
日本(クリニックを運営する会社)で面接
↓
採用が決まったらビザの手続き
↓
中国現地で就職・生活開始
という流れでした。
ちなみに、転職サイト経由以外の就職パターンもご紹介します。
上記はいずれも、私が現地で出会った同僚・知人ナースの場合です。
青年海外協力隊の場合は、経験やスキルを考慮して派遣地が決められるので、希望通りにならないことも多いです。
日本の看護師資格で働ける?
中国国内では、原則、日本の看護師資格で医療行為はできません。
ただし、先述のような『技術援助・交流』などで派遣される場合は、注射・点滴等の直接の医療行為が認められています。
看護師として就労ビザが取れる理由
日本の看護師資格では、看護師として就労ビザを取ることはできません。
そこで、私が就職した当時は『护理培训师』という肩書で就労ビザが取られました。
(※といっても、手続きは全て雇用先にお任せしました。中国の就労ビザ取得はとても大変です。)
『护理培训师』は、『看護師指導員』みたいな感じ
技術指導や人材育成ができる等、『中国に貢献する人材』という印象を与えると、就労ビザが取りやすいと言われていました。
また中国の就労ビザ(Zビザ)は、年々取得が厳しくなっています。
2017年からはビザ取得の基準にポイント制が導入。
これによって、学歴・職務年数・HSK(中国語)試験結果など、さまざま項目でポイントが加算され、人材が評価されます。
参考サイト:大和総研「中国が外国人就労者をランク付けへ」
実際、採血も注射もしないかというと…
中国の看護師資格を持たない日本人ナースは、本当に注射の一本もしないのか?
これは勤務する医療機関の方針によります。
もちろん表向きには、直接の医療行為はしないことになっていますが、実情はさまざまです。
中国の法律に関わるので明言は避けておきます(小声)
ちなみに医師の場合はというと…
日本の医師免許+書類申請で、邦人向けクリニックでの就労が認められています。特別に国際免許などを取得する必要はありません。
求められる語学力は?
実際の募集条件を参考にしてほしいのですが、
意外と『中国語の語学力不問』という条件のクリニックが多いです。
多くの日系クリニックの場合、日本語が堪能な中国人スタッフが多く、院内の公用語が日本語。
なので、語学力不問だったり、高い語学力を求めない医療機関が多いわけです。
とはいえ、中国語が多少なりともできればメリットは大きいです。
例えば、
中国人スタッフとの距離を縮めるため、彼女たちの母国語を使って歩み寄るのは大事なことかなと思います。
入職後に勉強するのも◎。
簡単な中国語は話せて損はないです。
生活も楽しくなりますよ。
仕事の内容は?
ここからは、私が勤務していた日系クリニックでの看護師業務をご紹介します。
他の日系クリニックで働く友人も似たような業務内容だったので、わりと標準的なのではないかと思います。
診療の補助
診療補助は日本の外来と同じです。
スムーズに外来患者さんを案内し、必要であれば診察の介助をする。
また、日系クリニックは小児科を併設しているところが多く、子どもの診察介助も重要な業務です。
健康診断
健康診断の業務も日本の『健診クリニック』と同じです。
業務の一例を挙げると、
✔バイタル&身体測定
✔視力・聴力検査
✔心電図
✔肺機能検査
✔バリウム検査の補助、などを行います。
院内薬局の業務
中国の日系クリニックは、たいてい院内で患者さんに薬を渡します。
薬剤師が常駐しているクリニックもありますが、日本人看護師も調剤業務に関わる場面は多いです。
例えば、
✔薬剤のダブルチェック役
✔薬剤師不在なら調剤全般
✔薬の棚卸し業務
日本のクリニックでも同じような業務をするのかもしれませんが、
私も含めて病棟勤務の経験が多い方にとっては、お薬との距離がかなり身近になり、自然と知識も増えていくと思います。
院内の環境整備
日系クリニックの場合、患者さんの8割以上が日本人です。
患者さんが期待するのは、日本と同じような医療サービス。
なので、日本人目線で院内の清潔さに気を配ることが大事です。
✔トイレは清潔?
✔ゴミは落ちていない?
こんな当たり前なことなんですけどね。
一緒に働くスタッフは中国人が多く、皆が同じような感覚で環境整備に関わってくれるわけではありません。
日本人看護師である自分が、環境整備のまとめ役として気を配っていく必要があります。
スタッフの教育
多くのクリニックで、日本人看護師は中国人スタッフの指導的役割も求められます。
先述の通り、同僚のほとんどは中国人。
衛生観念や接遇マナーなど、多くの面で日本人と違いがあります。
どちらが良いとかではないんですが、
患者さんの多くが日本人である以上、日本の清潔意識やマナーを身につけてもらう必要がありますよね。
中国人スタッフが皆そうだったわけではありませんが、
私が入職時に気になったスタッフの様子をご紹介すると…
✔診察室裏での話し声(雑談)が大きい
✔落ちた物品を拾ってそのまま使う
✔患者さんの脱いだ靴を揃えてあげるのは良いが、その手で採血
✔お菓子をつまんでいた手で採血
ちょっと直してほしいですよね。
相手から見れば小姑みたいでうっとおしいと思うのですが、気分を害されない感じで声掛けしていくっていうのも日本人看護師の役目です。
あとは、病院で必要な日本語を教えたり、会話練習の相手をしたりもしていました。
要は何でもする
何でもする、コレに尽きます。
日本でもクリニック勤務は似たような感じかもしれませんが、
『診療補助・薬局・受付』…この3つは基本。
加えて、
✔中国人スタッフの教育
✔患者さんと何かトラブルがあった際の窓口(要は矢面)
なんかも加わってきます。
大変ですが、それだけやりがいを感じる部分でもありますね。
同僚は中国人ナース。うまく働ける?
ここからは職場の人間関係についてお話していきます。
最初はぶつかることもある
『日本からやってきた看護師…
給料は中国人スタッフよりも数倍もらっていて、しかもあれこれ指導してくる』
となると、はじめは大歓迎!!という存在ではないかもしれません。
私の場合で言うと、
入職当初は中国人スタッフとの上手な関わり方が分からず、
『私語は控えましょ~』
『クリニックの薬を勝手に使わないで~』
どストレートに注意してそっぽ向かれたりしました。
受け入れられると家族みたいな距離感に
個人的な感想ですが、
中国人は、受け入れてくれると家族のように温かい人たちが多いです。
こういった中国人の温かさに触れることは、中国で働く楽しさ・喜びの一つだと思います。
では、『新入りの自分を、職場の人たちにどう受け入れてもらうか?』
実際働いてみて、国は関係ないかなと思いました。
日本でも、まじめに頑張っていれば恨まれることはないし、自然と認められ受け入れられますよね。
『自分の頑張り』と『互いに慣れるための時間』が必要かなと思います。
中国で働いたあとの進路は?
ここからは、
✔中国で働いたあとの進路は?
✔経験は役に立つ?
こんなことをお話します。
多くの看護師は2.3年働いて帰国
私が中国で出会った日本人看護師(8人ほど)は、みんな3年以内で退職・帰国しています。
契約上そうなっているとかではなく、いわゆる自己都合退職です。
私も2年半ほど働いて帰国、再就職しました。
ちなみに私が出会った看護師仲間は全員30歳前後。
おそらくこれは『あるある』ですが、中国で働いていると誰しも多少は芽生えてくる気持ちがあって、
くわしく説明しますね。
30歳前後ということは、5~10年程度日本で経験を積んで中国に来るケースが多いです。
苦労して一人前の看護師になり、まだまだ働き盛りの状態で、
負担の軽いクリニック業務を続ける、しかも海外で…となると
『これでいいのか自分?!』
『日本で復職できる?』
『ブランクになるんじゃ…』
という気持ちが湧いてくるわけです。
それと中国の生活環境にも帰国を考える理由はあって、
✔大気汚染が深刻
✔『食の安全』が心配(残留農薬など)
長くこの国で暮らしていて大丈夫かな…という気持ちにもなってきます。
長く働くというよりは、チャレンジ
私も含めて、『中国で長く働く』という意思で就職する看護師はレアです。
『中国で働いてみたい』というチャレンジ精神で来る人が大半ではないでしょうか。
チャレンジしていく中で、
自分のキャリアを見つめなおしたり、海外で働くことの現実に気が付いたりするんですね。
中国での職歴は役に立つキャリア
日本の臨床から離れる不安…
中国という生活環境への不安…
ネガティブなことも書きましたが、中国で看護師として働いた経験は、今後に役立つキャリアです。
世界中に中国人が暮らす時代。
観光・ビジネスで訪日する外国人は、ここ数年、中国人がダントツで多いです。
帰国後、中国語の語学力が役に立つ場面は必ずやってきます。
日本国内だったら、どんな医療現場で中国語が役に立つのか?
別記事でくわしく書きましたので、参考にしてみてください。
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【中国語ができる看護師】ニーズが高い医療現場はこんなところ
中国(海外)で看護師を続けるなら?
ここからは、長く中国(海外)で働きたい方に向けて、
✔中国の看護師資格を取ってガッツリ働く
✔中国以外のアジア圏にもチャレンジ
こんな進路を提案します。
中国の看護師試験にチャレンジ(難しいが)
海外で看護師として長く働くなら、やはりその国の看護師免許を取得するのがオススメ。
理由は2つあって、
✔転職の可能性が広がる→日系クリニックだけでなく現地の医療機関など
✔就労ビザ取得/更新のハードルが下がる
また雇う側も、中国の看護師資格があれば医療行為が法的に認められるので、医療監査に引っかかるリスクが減る、などメリットがあります。
ただ中国の看護師資格取得は容易ではなく、条件としては
【中国の看護師試験 受験資格】
〇国務院教育行政部門が認める海外の看護専門学校卒業証と看護師資格証
〇中国が指定するHSK(中国語水平試験)の合格証(※)
〇衛生行政部門が指定した医療機関で3か月以上の研修※求められるHSK級数は不明
引用元:职业学校 招生网【我国护士(护理)执业资格考试要求】
(中国サイトにとびます)
中国語で試験を受けるので、相当の語学力が求められるのはもちろん、
まず受験資格を得るために、指定の医療機関で研修を受ける必要があります。
けっこうハードル高いです。
個人でチャレンジというよりは、医療関係の有力者からのサポートがあったほうが、事がスムーズに運ぶことは間違いありません。
コネや根回しが効いてくる国ですからね。
中国以外のアジアにもチャンスあり
日本人看護師を採用している日系クリニックは、東南アジアにも多くあります。
主には日本企業が多く進出している国・地域になりますが、例えば…
✔シンガポール
✔タイ(バンコク)
✔マレーシア(クアラルンプール)
✔ベトナム(ハノイ・ホーチミン)
上記のような国・都市が代表的です。
中国も含めてアジア圏の日系クリニックでは、『語学不問』で看護師を募集することが多く、挑戦するハードルは高くありません。
募集自体が頻繁ではないので、
という感じでタイミングを逃さないようにしたいですね。
【日本人看護師in中国】まとめ
中国の日系クリニックで働く日本人看護師について、くわしくお話しました。
ざっくりまとめます。
日本人看護師の多くが数年で離職することについても触れました。
数年で辞めたとしても、中国での職歴は立派なキャリアです。
職歴を生かした今後の可能性もさまざまありますよ。
「中国に看護師転職、チャレンジしてみたい」
「働き盛りの年齢で日本の臨床から離れて大丈夫かな」
この記事の最後で、
興味があるけど迷いがある方にお伝えしたいのは、
『大丈夫、ブランクにはなりませんよ』ということ。
むしろ、30歳前後の体力もあって、物覚えもいいうちにチャレンジすることをオススメします。
人生の幅を広げる貴重な経験になるはずです。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
日本国内で中国語と関わりたい看護師さんにオススメ記事
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